ケアプランのニーズ(生活全般の解決すべき課題)の書き方と例文
ニーズは第2表の起点であり、ここがずれると計画全体がずれます。「困っていることを書く欄」と捉えると難しくなりますが、「その人がどうなりたいかを書く欄」と捉えると書きやすくなります。
第2表(ニーズ・目標)
最終更新:2026年10月10日/令和6年度介護報酬改定後の制度および現行の居宅サービス計画書標準様式に基づいて作成しています。
ニーズとデマンドの違い
デマンド(要望)は、ご本人が口にする希望そのものです。ニーズは、専門職としての課題分析を経て導かれる「生活を続けるために解決すべきこと」です。
「毎日ヘルパーに来てほしい」はデマンドです。その背景に「調理ができず食事が偏っている」という状況があるなら、ニーズは「バランスのとれた食事を毎日とりたい」になります。デマンドを否定するのではなく、その奥にある本当の願いを言葉にするのがニーズです。
課題分析からニーズを導く手順
ニーズは思いつきで書くものではなく、課題分析(アセスメント)から順を追って導きます。
- 現状を把握する(心身の状況・生活環境・これまでの経過)
- 何が起きているかを整理する(できていること/できていないこと)
- その原因・背景を考える(なぜそうなっているのか)
- このままだとどうなるかを予測する
- ご本人の意向と重ね合わせ、「どうなりたいか」の形にする
本人主体・肯定形で書く
ニーズは、ご本人を主語にした肯定的な表現で書きます。「〜ができない」という書き方は、状態の説明にはなっても、目指す方向を示しません。
また、ご本人が読んで納得できる言葉であることも大切です。専門用語や、できないことを並べた表現は、ご本人の意欲をそぐことがあります。
- ◯ むせずに安全に食事を摂りたい
- × 嚥下機能が低下しており誤嚥のリスクがある(アセスメント結果であってニーズではない)
- ◯ 転倒せずに、安全に生活したい
- × 下肢筋力低下により転倒リスクが高い(同上)
- ◯ 家族の負担を減らしながら在宅生活を続けたい
- × 介護者の負担が限界に近い(本人が主語になっていない)
アセスメントの言葉を、ニーズに言い換える例(20本)
アセスメントでつかんだ「できないこと・心配なこと」を、ご本人を主語にした「〜したい」に言い換えた例です。上の小さな字がアセスメントでの書き方、その下がニーズの書き方です。「コピー」を押すと、ニーズの文だけがメモ板に入ります。ご本人が実際に話された言葉があるときは、そちらを優先してください。
移動
アセスメントでは:下肢の筋力が低下し、屋内で転倒をくり返している転ばずに、家の中を自分の足で歩いて移動したい
アセスメントでは:屋外の歩行が不安定で、外出の機会が減っている杖を使って、近所の店まで自分で買い物に行きたい
アセスメントでは:玄関の段差が高く、一人では出入りができない玄関の出入りを安全にして、通院や外出を続けたい
排泄
アセスメントでは:夜間の頻尿があり、トイレまでの移動で転倒の危険がある夜も、転ばずに自分でトイレに行きたい
アセスメントでは:尿意があいまいで、間に合わないことがある失敗を気にせず、トイレで気持ちよく排泄したい
入浴・清潔
アセスメントでは:浴槽をまたぐ動作が不安定で、一人での入浴には危険がある転ぶ心配をせずに、湯船につかってさっぱりしたい
アセスメントでは:体を洗うことと着替えに時間がかかり、入浴の回数が減っている手伝ってもらいながら、週2回は入浴して清潔を保ちたい
食事・栄養
アセスメントでは:飲み込む力が低下し、食事中にむせ込みがあるむせずに、好きなものをおいしく食べたい
アセスメントでは:調理が負担になり、食事の量と回数が減っている1日3食をしっかり食べて、体力を保ちたい
服薬・健康
アセスメントでは:薬の飲み忘れがあり、血圧が安定しない薬を忘れずに飲んで、体調を安定させたい
アセスメントでは:心不全で入退院をくり返している体調の変化に早く気づいて、入院せずに家で暮らし続けたい
アセスメントでは:腰と膝の痛みが強く、夜間に何度も目が覚める痛みをやわらげて、夜はぐっすり眠りたい
認知・気持ち
アセスメントでは:もの忘れがあり、火の消し忘れがみられる火の心配をせずに、慣れた台所で料理を続けたい
アセスメントでは:日付や予定が分からなくなり、不安が強い今日の予定が自分で分かり、安心して一日を過ごしたい
家事・社会参加
アセスメントでは:掃除と洗濯が、一人では行えないできる家事は自分で続けながら、片づいた部屋で気持ちよく暮らしたい
アセスメントでは:閉じこもりがちで、人と話す機会がほとんどない気の合う人と話をしたり、体を動かしたりする機会を持ちたい
アセスメントでは:退職後、役割がなくなり、意欲が低下している得意な書道を続けて、作品をだれかに見てもらいたい
家族・これからの暮らし
アセスメントでは:主介護者の介護負担が大きい家族に無理をかけすぎずに、この家での暮らしを続けたい
アセスメントでは:家族が就労しており、日中は一人で過ごしている家族が仕事に出ている間も、一人で安心して過ごしたい
アセスメントでは:終末期で、今後、痛みが強まることが考えられる痛みをおさえて、最期まで家族と家で過ごしたい
優先順位をつける
生活上の課題は複数あるのが普通です。すべてを同列に並べるのではなく、生命・安全に関わること、ご本人が強く望んでいること、他の課題の解決につながることを上位に置きます。
第2表の上から順に、優先順位が高いものを並べるのが一般的です。
本人が課題を認識していないとき
専門職から見れば明らかな課題でも、ご本人が「困っていない」と言うことがあります。この場合、無理にニーズとして書き込んでも、支援は進みません。
まずは、ご本人が困っていると感じていることから支援を始め、関係ができてから改めて話し合うという進め方もあります。認識のずれがあること自体を、第1表や支援経過に記録しておくと、チームで共有できます。
ニーズの手前で、課題を整理しておく
ニーズ(生活全般の解決すべき課題)は、アセスメントからいきなり書くと、根拠がつながりにくくなります。そのあいだに置くのが課題整理総括表です。課題整理総括表AIにアセスメントの下書きを貼ると、様式5の形で、阻害要因・状況の事実・改善/維持の可能性・見通し・ニーズ案まで下書きします。阻害要因はAIが案を出し、最後はケアマネジャーが直す前提です。Excel で様式どおりに書き出せます。登録もインストールもいりません。
課題整理総括表AIを開く →よくある質問
課題分析の結果を踏まえて原案を作るのはケアマネジャーですが、確定させるのはご本人との合意を経てからです。ご本人が納得していないニーズは、目標にもサービスにもつながりません。
在宅生活の継続に直結する場合は書きます。その際も「家族の介護力が不足している」ではなく、「家族の負担を減らしながら在宅生活を続けたい」のように、ご本人を主語にした表現にすると計画に乗せやすくなります。
課題分析の結果は「今どういう状態か・なぜそうなっているか」という専門職の分析です。ニーズは、それを踏まえて「これからどうなりたいか」を本人主体で表したものです。前者が第1表、後者が第2表に対応します。