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ケアプラン作成の解説

ICFの書き方・記入例|6つの箱の図で、アセスメントを整理する

ICFという言葉を研修で聞いたけれど、実務でどう使うのか分からない——そういう声を、よく聞きます。ICFは、むずかしい分類表ではありません。その方の生活の全体を「6つの箱」に分けて見る地図です。この記事は、ICFを知らないケアマネジャーが、アセスメントから6つの箱の図を作れるようになることを目指して書きました。

アセスメントと課題の整理

最終更新:2026年9月19日/令和6年度介護報酬改定後の制度および現行の居宅サービス計画書標準様式に基づいて作成しています。

ICFとは、ひとことで言うと

ICF(国際生活機能分類)は、2001年にWHO(世界保健機関)が決めた、人の「生活のしかた」を見るための共通の枠組みです。日本の介護保険でも、アセスメントや課題整理総括表の考え方の土台になっています。

大切なのは1つだけです。「できないこと」だけを見るのではなく、「できていること」「支えになっている人や物」「その人らしさ」も同じ図の中に入れることです。そうすると、「どこに働きかければ、暮らしが動くか」が見えてきます。

たとえば「膝が痛くて外に出られない」という方がいるとします。膝の痛みだけを見ていると、できることはリハビリと痛み止めの相談くらいです。ところが、「週に1回、友人がお茶を飲みに来てくれる」「庭の花の世話は続けている」という「+」が図に入ると、話が変わります。友人と一緒なら近くの店まで歩けるかもしれない。花の世話が、外に出るきっかけになるかもしれない。ICFは、そういう支援の手がかりを見つけるための道具です。

6つの箱の図(まずこれだけ)

ICFは、次の6つの箱でできています。上から下へ、左から右へ、矢印でつながっています。まず、この図の形だけ覚えてください。

ICF整理シート(記入例)氏名:

① 健康状態

病気・けが・体の状態

  • +服薬は続けられている
疾患等
  • −変形性膝関節症(膝の痛み)

② 心身機能・身体構造

体と心の働き

  • +記憶や判断は保たれている
機能・構造障害
  • −膝の痛みで長く歩けない
  • −浴槽をまたぐのが怖い

③ 活動

ひとりでできる・手がいる

<できる活動>
  • +杖と休みをはさめば近所まで歩ける
<している活動>
  • +室内は伝い歩きで移動
  • +服薬は自分で管理
活動制限
  • −浴槽に入れず、シャワーのみ
  • −買い物は自分ではできない

④ 参加

役割・関わり・楽しみ

  • +週1回、友人とお茶を飲む
  • +庭の花の世話
参加制約
  • −買い物に出かける機会がなくなった

⑤ 環境因子

家・道具・家族・サービス

  • +長女が週末に買い物
  • +近所の友人が週1回来る
阻害因子
  • −浴槽が高く、手すりがない

⑥ 個人因子

その人らしさ

  • +80代女性。独居
  • +「できるだけ自分で暮らしたい」
  • +お風呂にゆっくり入るのが好き

浴室の手すりがあれば、「お風呂にゆっくり入りたい」に近づけると思われる。友人との時間と花の世話は、この方を支えている「+」なので、続けられるようにしたい。

+できていること・支え(上の段) −困っていること・妨げ(下の枠)

この形は、主任介護支援専門員研修などで使われる「ICF整理シート」と同じです。各箱の上の段に「+」(できていること・支えになっていること)、下の小さな枠に「−」(疾患等・機能・構造障害・活動制限・参加制約・阻害因子)を書きます。「活動」だけは<できる活動>(やろうと思えばできること)と<している活動>(ふだん実際にしていること)に分けます。この2つの差——「できるのに、していない」——が、支援の手がかりになります。氏名の欄は、印刷したあとに手書きしてください(AIには名前を入れません)。

箱生活の言葉で言うと書くことの例
① 健康状態病気・けが・体の状態変形性膝関節症、高血圧、脳梗塞後、認知症の診断 など
② 心身機能・身体構造体と心の働き筋力、痛み、関節の動き、記憶、視力・聴力、気持ちの落ち込み など
③ 活動ひとりでできること・手がいること(動作)歩く、食べる、トイレ、入浴、着替え、家事、買い物、薬を飲む など
④ 参加役割・人との関わり・楽しみ(生活の場面)家族の中での役割、外出、友人との交流、趣味、通いの場、地域の行事 など
⑤ 環境因子周りの支え・妨げ(その人の外にあるもの)家の段差や手すり、福祉用具、家族、サービス、近所の人、制度、季節 など
⑥ 個人因子その人らしさ(その人の中にあるもの)年齢、生活歴、仕事、性格、大切にしていること、これまでの乗り越え方 など

②③④の3つをまとめて「生活機能」と呼びます。ICFの中心はここです。①は生活機能に影響する体の状態、⑤⑥は生活機能を左右する背景、と考えると整理しやすくなります。

「+」と「−」を必ず両方書く

ICFの図でいちばん多い失敗は、「−」ばかりの図です。できないこと、困っていることを並べただけの図は、アセスメントの言い換えにしかなりません。

どの箱にも、「+」を最低1つ入れてください。「室内は伝い歩きで自分で移動できる」「薬はカレンダーで自分で管理できている」「友人が週1回来てくれる」——こうした「+」は、計画の中で守るもの・生かすものになります。

  • +:できていること、続いていること、支えになっている人や物、本人の強み・思い
  • −:手がいること、減ってしまったこと、妨げになっているもの

個人因子(その人らしさ)は、原則としてすべて「+」で書きます。「頑固」「わがまま」「依存的」といった評価や決めつけは、ICFの箱ではありません。「自分のことは自分で決めたい方」「人に頼るのが苦手」のように、その人の持ち味として書きます。

書く順番(5つのステップ)

アセスメントの用紙を見ながら、次の順番で箱を埋めていくと迷いません。③活動から始めるのがコツです。動作は事実として書きやすく、そこから他の箱に広げやすいからです。

順番すること見るところ
1③活動:ひとりでできること(+)と、手がいること(−)を動作ごとに書く認定調査票の基本調査、アセスメントのADL・IADL
2②心身機能:「なぜ手がいるのか」の体と心の理由を書く。「+」も忘れずに主治医意見書、アセスメントの健康状態・認知機能
3①健康状態:病名と、いまの状態(安定している/治療中)を書く主治医意見書、お薬手帳
4④参加:役割・外出・交流・楽しみのうち、続いていること(+)と減ったこと(−)生活歴、社会との関わり、本人の言葉
5⑤環境と⑥その人らしさ:支えと妨げ、そしてその人の持ち味を書き、最後に矢印でつなぐ家族の状況、居住環境、生活史、主訴・意向

矢印は、「どの箱の何が、どの箱の何につながっているか」です。3〜5本で十分です。「膝の痛み(②)→ 浴槽をまたぐのが怖い(②)→ 浴槽に入れない(③)→ お風呂にゆっくり入りたい思いがかなわない(④⑥)」のように、−の元をたどる矢印と、「友人の訪問(⑤)→ 人との関わりが続く(④)」のように+を支える矢印の両方を引きます。

アセスメントを、AIで6つの箱の図にする

アセスメントの文章や書類を入れると、ICF整理AIが6つの箱に分け、+と−、つながりの矢印つきの図にします。A4横1枚で印刷でき、そのまま課題整理総括表AIに渡せます。登録もインストールもいりません。

ICF整理AIを開く →

箱ごとの記入例(コピーして使えます)

6つの箱それぞれに、記入例を6本ずつ用意しました。行の頭の「+」「−」ごと、そのままコピーして、その方に合わせて直してお使いください。

① 健康状態

− 変形性膝関節症。両膝に痛みがあり、整形外科に月1回通院

− 脳梗塞後(2年前)。右片麻痺が残っている

− アルツハイマー型認知症(診断あり)。もの忘れ外来に2か月に1回

+ 高血圧は内服で安定している。ここ半年は数値の変動なし

+ 糖尿病の食事療法を続けられており、HbA1cは目標の範囲

− 慢性心不全。労作時に息切れがあり、水分制限の指示がある

② 心身機能・身体構造

− 膝の痛みのため、連続して歩ける距離が5分程度

− 右手の握力が弱く、細かい作業がしにくい

− 短期記憶の低下があり、直前のことを忘れることがある

+ 判断力は保たれており、自分のことは自分で決められる

+ 聴力・視力は日常生活に支障がない

− 気持ちの落ち込みがあり、「何もする気になれない」と話す日がある

③ 活動

+ 室内は手すりと伝い歩きで、自分で移動できている

+ 食事は自分で食べられる。むせはない

− 浴槽をまたぐことができず、この1か月はシャワーのみ

− 買い物は自分では行けない。長女が週末にまとめて行っている

+ 服薬はお薬カレンダーを使って自分で管理できている

− 夜間のトイレは付き添いが必要(月に数回、ふらつきあり)

④ 参加

+ 週1回、近所の友人が来て、一緒にお茶を飲む時間が続いている

+ 庭の花の世話を毎朝続けており、本人の楽しみになっている

− 以前は月2回通っていた地域のサロンに、膝の痛みから行かなくなった

+ 家族の食事の献立を決めるのは本人の役割で、いまも続いている

− 買い物や銀行に自分で出かける機会がなくなった

+ 孫の来訪を楽しみにしており、月1回は家族が集まっている

⑤ 環境因子

+ 長女が同居しており、夜間の見守りと買い物を担っている

+ 廊下とトイレに手すりを設置済み

− 浴槽が高く、浴室に手すりがない

+ 通所介護を週2回利用しており、入浴と人との交流の場になっている

− 最寄りのバス停まで徒歩15分で、一人では行きにくい

+ 近所の民生委員が月1回、様子を見に来てくれる

⑥ 個人因子

個人因子は、すべて「+」で。評価や決めつけの言葉は使いません。

+ 80代女性。夫を5年前に亡くし、以後は独居

+ 長年、美容師として働いてきた。人と話すのが好き

+ 「人に迷惑をかけたくない。できることは自分でやりたい」という思いが強い

+ 几帳面で、薬やお金の管理をきちんとしてきた

+ 若い頃から庭仕事が好きで、花を育てることが生活の張りになっている

+ 「お風呂にゆっくり入るのが、一日でいちばんの楽しみ」と話す

よくある間違いと、直し方

よくある間違いなぜ困るかこう直す
①健康状態に病名だけ並べて終わる病名は事実ですが、生活のどこが止まっているかが見えない病名は①に、そのせいで起きている体の働きの変化は②に、動作への影響は③に分けて書く
「−」ばかりで「+」がないアセスメントの言い換えになり、支援の手がかりが出てこないどの箱にも+を最低1つ。「できている」「続いている」「支えてくれる人がいる」を探す
③活動と④参加を混ぜる「デイに通う」と「デイで入浴介助を受ける」は別の話動作なら③、役割・関わり・楽しみの場面なら④。「〜できる/手がいる」なら③、「〜している/しなくなった」なら④
⑤環境因子を忘れる家族やサービスという大きな「+」が図に入らない家・道具・家族・サービス・近所・制度の6つを順に見て、支えと妨げを書く
⑥個人因子に評価を書く「頑固」「依存的」はICFではなく、決めつけになるその人の持ち味・大切にしていること・これまでの生き方として書く
矢印がない箱に分けただけでは、次に何をするかが決まらない−の元をたどる矢印と、+を支える矢印を3〜5本引く

ICFの図から、課題整理総括表と第2表へ

ICFの図は、それ自体を提出するものではありません。課題整理総括表や第2表を書く前の整理として使うと、いちばん役に立ちます。対応は次のとおりです。

ICFの箱課題整理総括表第2表
②心身機能の「−」・⑤環境の「−」・①健康状態自立した日常生活の阻害要因①〜⑥(ニーズの理由の部分)
③活動の「+」「−」状況の事実(現在:自立/見守り/一部介助/全介助)サービス内容(何を手伝うか)
④参加の「+」「−」・⑥その人らしさ利用者及び家族の生活に対する意向、見通しニーズ(〜したい)、長期目標
矢印要因の番号(①〜⑥)と見通しニーズ→目標→サービス内容のつながり

つまり、ICFで「−の元はどこか」「+をどう生かすか」が整理できていれば、総括表の阻害要因と見通しは、その図を写すだけで書けます。ICF整理AIで作った図は、そのまま課題整理総括表AIに渡せます。

担当者会議で使うときは、A4横1枚に印刷して配ってください。「この−に、どの職種が働きかけるか」「この+を、誰がどう守るか」で話すと、各職種が自分の役割を見つけやすくなります。

施設・実務者研修(介護過程)で使うとき

この記事は居宅のケアマネジャー向けに書いていますが、ICFの図は施設のケアマネジャーや、介護福祉士実務者研修の「介護過程」でも同じように使えます。

  • 施設:⑤環境因子に「施設の職員・日課・設備」が入り、④参加に「施設の中での役割・行事・他の入所者との関わり」が入ります。「−」の元をたどる矢印は、居宅と同じです
  • 実務者研修(介護過程Ⅲ):事例から6つの箱に分ける演習に、この図の形がそのまま使えます。「+を必ず探す」「個人因子に評価を書かない」の2つを守るだけで、演習の質が変わります
  • ICFの分類コード(b・s・d・eで始まる番号)は、ふだんの実務では要りません。研修やリハビリ職との共有で必要なときだけ、あとから添えれば十分です

よくある質問

Q. ICFは、ケアマネジャーが必ず使わないといけないものですか?

義務ではありません。ただ、課題分析標準項目や課題整理総括表の考え方はICFを土台にしているので、6つの箱で見る習慣があると、アセスメントから計画までの筋道が通りやすくなります。

Q. ICFの分類コード(b・s・d・e)は覚える必要がありますか?

ふだんの実務では要りません。コードは分類表の番号で、研修やリハビリ職との共有で使うことがある程度です。まずは6つの箱の意味と、+と−を分けることだけで十分です。

Q. 「活動」と「参加」の違いが分かりません。

「活動」は、歩く・食べる・入浴するといった動作で、「ひとりでできるか、手がいるか」で見ます。「参加」は、家族の中の役割・外出・人との交流・趣味といった生活の場面で、「続いているか、減ったか」で見ます。「デイに通う」は参加、「デイで入浴介助を受ける」は活動です。

Q. 「+」が見つからない方は、どう書けばよいですか?

寝たきりに近い方でも、「声かけに表情で応える」「家族が毎日訪ねてくる」「好きな音楽がある」といった+はあります。本人の中(心身機能・個人因子)だけでなく、周り(環境因子)にも目を向けると見つかります。

Q. ICFの図は、どこに提出するものですか?

提出する様式ではありません。担当者会議で配って多職種と共有したり、課題整理総括表や第2表を書く前の整理に使ったりするものです。記録として残す場合は、支援経過に「ICFで整理した」旨と、確認した内容を書いておくとよいでしょう。

Q. AIで作った図は、そのまま使えますか?

下書きです。どの箱に入れるか、矢印をどうつなぐかは、ケアマネジャーの見立てそのものなので、必ずご自身で直してください。AIには、アセスメントに書かれていないことは書かせない決まりにしています。

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春名太郎 監修・作成:春名 太郎主任介護支援専門員/在宅医療クリニック 統括/HARUIRO LLC

ケアマネジャー最大15名が在籍する居宅介護支援事業所(特定事業所加算Ⅰ)で管理者を務め、自らも50名以上の利用者を担当してきました。現在は在宅医療クリニック 統括として、医療と介護の連携に運営の立場から関わっています。記録に何年も苦しんだ経験と、医療の側から見える連携の視点をあわせて、このツールをつくっています。介護職員初任者研修・実務者研修(介護過程Ⅲ)の講師。
掲載している文例は実務での使いやすさを基準に整理していますが、必ずご本人の状態・意向と保険者のルールに合わせて修正してお使いください。
開発の経緯と運営者情報 → / 𝕏 @TaroHaruna
運営:HARUIRO LLC(合同会社HARUIRO)

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